現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で起こる世界的な不況、「コロナショック」に対して不安が広がっており、それは今、転職を考えている人にとっても大きな不安材料のひとつになっている。
2020年6月現在、ウイルス感染も完全に終息しておらず、ワクチンも実用化されていない状況で、コロナショックの規模が今後どれほどになるのか、それが転職に与える影響も予測が難しいのが実情だ。
またこうした予測が難しいことが、より不安を大きくしている理由のひとつと言っていいだろう。
そこでこの記事では、過去の不況が転職にどのような影響を及ぼしたのか、2008年に起こった「リーマンショック」が転職に与えた影響ついて振り返ってみたい。
リーマンショックは、2007年アメリカでの住宅バブル崩壊から始まり、証券会社リーマンブラザーズの倒産をきっかけに世界に広がった不況だ。
日本でも、このリーマンショックによる世界経済の冷え込みの影響を受けて大きく景気後退し、多くの企業や、そして転職市場もその影響を受けた。
この時の転職全体の様子をデータや体験談などを元にまとめて解説する。
少なくともつい最近、緊急事態宣言の中では多くの企業で求人の取り下げや選考の一時中断なども見られ、ようやくそれが再開し始めたばかりという状況だ。
いま転職を始めようと考えている人や、転職を迷っている人も過去の事例から学んで判断材料にして欲しい。
リーマンショックと影響
リーマンショックは2008年頃にアメリカから始まり世界へ、もちろん日本にも大きな影響のあった不況だ。
当時どのような経緯、状況だったのか、特に20代から30代前半の体験したことのない世代に向けて簡単におさらいしておこう。
いまさら聞けない「リーマンショック」
リーマンショックを簡潔に言えば、アメリカの大手証券会社であるリーマンブラザーズの倒産を契機に、同社が発行した債券などを持つ世界各国の金融機関が被った大きな損失や、経済不安が広がって起こった経済危機だ。
リーマンショックを分かりやすく把握するために次のポイント3つを説明するので押さえておこう。
- リーマンブラザーズが広く扱った「サブプライム住宅ローン」
- アメリカで上昇し続けていた不動産価格が下落(住宅バブル崩壊)
- リーマンブラザーズの発行した債券を各国の大手金融機関などが保有していた
1.リーマンブラザーズが広く扱った「サブプライム住宅ローン」
リーマンブラザーズが中低所得者層(サブプライム層)向けに、金利が高く設定された住宅ローンを提供していたのだがこれが次々と回収不能になってしまった、これがサブプライム住宅ローン危機(サブプライムローン問題)だ。
日本では住宅ローンが残っている状態で家を売却しても残りのローン支払いは残る。
一方アメリカでは、住宅ローンを組んでいても住宅を手放すことで残りの返済を免れるというシステムのため、不景気によって利用者が住宅を手放してしまったのだ。
2.アメリカで上昇し続けていた不動産価格が下落(住宅バブル崩壊)
2007年頃、アメリカで上昇していた地価が予想に反して下がったことで、サブプライム住宅ローンを利用して不動産を購入した利用者のうち多くが住宅を手放してしまうことになった。
「サブプライムローンを利用して住宅を購入し、地価が上がったら売却すればローンを返済しても利益が出る」
こうした思惑は地価の下落によって外れ、利用者が次々と住宅を手放した結果、リーマンブラザーズにはローンの中途解約が積み重なり、その経営は急激に悪化することになった。
3.リーマンブラザーズの発行した債券を各国の大手金融機関などが保有していた
世界的な大手証券会社であったリーマンブラザーズの経営悪化、そして倒産によって、その金融商品を持っていた世界中の金融機関や企業、投資家は大きな損失を被ることとなった。
リーマンブラザーズは非常に高い格付けだったためにその顧客も多く、連鎖的な倒産も起こり、またこの影響によって経済不安が引き起こされ、世界的な不況へと繋がっていくことになる。
このように2007年頃アメリカで始まった住宅バブルの崩壊から2008年のリーマンブラザーズ倒産、そしてその世界的影響と、わずかな期間で急激に経済悪化が起こったのがリーマンショックだ。
日本の企業に与えた影響
アメリカで始まったリーマンショックだが、日本でも2008年には上場企業の倒産件数が戦後最多を記録、年間の全国倒産件数では15,000件を超えるなど、その影響は大きい。
参照:東京商工リサーチ調べ
サブプライムローン関連の直接的な損害は少なかったものの、国内外の調達先が倒産して仕入困難になる、輸出を含め物が売れない、資金調達が出来ないなど、世界的な不況の影響を受け大きく景気後退した。
なかなか景気が回復しない中、予想もしていなかった危機をきっかけに世界的な不況になっていく、といった状況は今回の新型コロナウイルスによる影響と似ている点があると言えるだろう。
データで見る、リーマンショックと転職
リーマンショックの概要と日本の経済や企業への影響について把握できたところで、リーマンショックが転職に与えた影響をデータで見ていこう。
当時と現在の状況の違いとして、当時は「買い手市場」、現在は「売り手市場」だったことが挙げられる。
つまり、転職希望者に対して、2007年頃は求人が少なく、2019年頃は求人が多い、という違いがあるということだ。
このように、リーマンショック当時のデータにも様々な要因が関係しているため、現在の転職活動に慎重にはなっても、不安を感じすぎる必要はないということを心に留めておいて欲しい。
2009年の転職実績は前年比50%ほどにダウン
まずは、一般社団法人 日本人材紹介事業協会「人材紹介大手3社 転職紹介実績の集計結果」から、リーマンショック前からのデータを紹介する。
このデータは、転職エージェントなど人材紹介大手3社が扱い転職ができた人数を集計したものだ。
半期(上期、下期)ごと、年齢層別に一覧表にしたので、リーマンショックの影響がより明確に分かるだろう。
2007年上 | 2007年下 | 2008年上 | 2008年下 | 2009年下 | 2009年下 | 2010年下 | 2010年下 | 2011年下 | 2011年下 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
25歳以下 | 4,151 | 4,280 | 4,435 | 2,847 | 1,804 | 1,465 | 1,680 | 1,668 | 1,853 | 1,841 |
26~30歳 | 10,470 | 10,682 | 10,702 | 8,035 | 5,039 | 4,803 | 5,702 | 6,164 | 6,585 | 6,977 |
31~35歳 | 5,959 | 6,229 | 6,170 | 4,713 | 2,888 | 2,730 | 3,278 | 3,573 | 3,791 | 4,187 |
36~40歳 | 2,044 | 2,320 | 2,198 | 1,705 | 1,118 | 1,035 | 1,291 | 1,365 | 1,361 | 1,665 |
40歳以上 | 1,316 | 1,386 | 1,274 | 988 | 747 | 809 | 941 | 965 | 1,047 | 1,103 |
計 | 23,940 | 24,897 | 24,779 | 18,288 | 11,596 | 10,842 | 12,892 | 13,735 | 14,637 | 15,773 |
リーマンショック前の半分以下
20代の若手人材から30代の転職適齢期まで、リーマンショック後は軒並み半数以下まで落ち込んでいることが分かるだろう。
説明したように2008年の倒産件数は15,000件にも上り、倒産しないまでも人員整理などを行った企業も多かった。
このような状況では中途採用の求人自体、大幅に減るのは当然だろう。
また、リーマンショック前の7割程度に戻るまでリーマンショックが起こってからおよそ3年かかっていることにも注目したい。
慌てて転職して転職失敗は避けたいところだが、慎重になり過ぎてタイミングを逃せば向こう数年厳しい状況が続くこともあるため、転職するのであれば慎重さに加えタイミングの見極めも重要だ。
40歳以上は比較的緩やかな減少に
40歳以上の転職者数はもともと多くはないが、リーマンショックの影響が比較的小さくなっている。
これは、同時期に中堅社員の不足という問題があったことも要因のひとつと推測できる。
バブル崩壊後、就職氷河期と言われる世代は新卒採用が非常に少なかったため、当時多くの企業で40歳以上の中間管理職を務めるような人材が不足し始めていたのだ。
つまり、企業にとっては即戦力で事業の軸となる人材は採用しつつ、少数精鋭で乗り切ろうという意図があったと思われる。
不況でも40代以上は強い、という単純な話ではなく、不況以外にも様々な要因が関係していると言えるだろう。
転職の動機や転職先を選んだ理由にも変化
次に、リーマンショックの時期に転職した人が実感した景気の影響をデータで見てみよう。
人材紹介最大手の一社である株式会社リクルートキャリアのプレスリリース資料「転職者の動向・意識調査」から抜粋して紹介する。
このデータは、リーマンショックの時期にリクルートの転職サービスから転職できた人の意見を集計しているのでその傾向を見て欲しい。
景気の影響を感じる期間
景気悪化の影響 | 2008年 11月 | 2009年 1-3月 | 2009年 4-6月 | 2009年 7-9月 | 2009年 10-12月 | 2010年 1-3月 |
---|---|---|---|---|---|---|
あったと感じる | 33.8% | 52.2% | 65.2% | 66.1% | 68.8% | 66.9% |
なかったと感じる | 39.6% | 29.2% | 19.5% | 17.0% | 16.0% | 18.5% |
リーマンショックの起こった2008年から2年間、転職者が感じた不景気感や不況の影響を追ってみると、不況が始まって半年後からより影響を感じ始めていることが分かる。
このデータを見る限りでは、早く行動を起こした人の方が比較的不景気の影響を感じることなく転職活動ができたと見ることができるだろう。
また、2010年4-6月から設問が変更された「景況感をどう感じたか」への回答で「悪い」とした人は、2011年4-6月で54.2%、2011年1-3月では39.2%となっている。
データからは、実感としてリーマンショックが起こって半年後から影響を感じ始め、2年後ようやく少しずつ景気の悪さを感じる人が減り始める、という様子が分かる。
具体的に影響を感じたこと
どのような点で不景気の影響があったと感じたのか、調査結果のうちコメント(自由回答)欄から抜粋して紹介する。
■転職活動に不景気の影響があったと感じた具体的なコメント
- 企業の選考基準や人事計画が厳しくなったため書類選考だけで落とされるケースが多い
- 求人に対して応募者が多いなどの理由で選考に時間がかかる
- 企業側が未経験を歓迎しなかった
- 求人案件が極端に少なかった、求人案件の取り止めもあった
- 今までの仕事が続けられなくなったため転職したくなかったが転職活動をした
リーマンショック以前からの影響で買い手市場(求人より応募者が多い)だったため、それに輪をかけて厳しい状況になっていたことがうかがえる。
また、通常より選考基準が厳しくなり、適任者がいない場合は「採用なし」もあり得る、といった採用企業の意向の変化は今後もコロナショックが大きく影響すれば充分にあり得るだろう。
転職をしようとする場合は、動き出すタイミングや、自身の強みを書類と面接の両面からアピールする方法など、準備を万全にして臨んで欲しい。
体験談から不況時の転職について知る
データや調査結果からみたリーマンショックの影響について説明したが、さらに深掘りして、ネット上に公開されている記事などで当時の様子をピックアップして解説する
体験談はそれぞれの状況によって異なるため必ずしも自身に当てはまるとは限らないが、リーマンショック当時の様子を知ることで今後コロナショックによる転職への影響が出た際のリスク対策として学んでおくべきだろう。
ここで紹介する体験談はエン・ジャパンが運営する「ミドルの転職」の公式サイト内、転職体験レポートに掲載されたものだ。
なお、この体験談は人材紹介を利用した応募者が「このサービスを利用したため転職ができました」という体験談となっているため、当時の様子が分かる部分のみ抜粋して紹介する。
体験談その1
不況が進むと企業が人件費を絞って対策することも少なくないのだが、早期退職の募集はその初期段階と言える対策だろう。
このタイミングではまだ自身で退職、転職のタイミングを決めることができるからだ。
体験談 早期退職、苦戦しながら2か月ほどで転職

2年前に転職したばかりの会社が、業績不振によって出向を乱発。ほぼリストラ敢行という状態になりました。悪条件のまま残るか、早期退職制度を利用するか悩んだ末、早期退職を決断しました。
転職活動を始めて最初の1ヶ月は、なかなか上手くいかず、まさに不況だと実感しました。。。工夫の末、2ヶ月目から多くのスカウトをいただけるようになり、紹介会社のコンサルタントに案件や条件の話をしっかり聞いて、応募企業を5社にしぼりました。しかし、書類選考が通らなかったりと、またもや苦戦。なんとか3社最終面接に辿り着きました。
(コンサルタント・31歳男性)
解説
不況の中、早期退職に応じてまずまず上手くいった転職の例と考えていいだろう。
世界中が不景気になっている中で自身の勤務先が苦しいということは、同業他社でも概ね同じような状況だろうということは容易に想像できるはずだ。
この体験談では、その中でも求人を出せる企業、案件や条件などをしっかり吟味して転職のアプローチを行っている。
31歳という、どちらかといえば転職に有利な年齢という要因もあるが、厳しい情勢で2か月、3社の最終面接から内定に結び付けられたことは上出来といっていいだろう。
体験談その2
続いても同じく早期退職に応じて退職、転職活動を行ったケースだが、転職する際の年齢、転職回数など、人によってはさらに苦労する場合もある。
不況の中での採用は、多くの企業にとって予算も選考基準もシビアなものになるからだ。
体験談 書類選考、一次選考が通りにくく転職活動約3か月

事業縮小に伴う、早期退職制度への応募が直接のきっかけです。業績が悪かった事実は、経理なので当然知っており、危機感もありました。そんな中、昨年末一気に業務見直しが決定しました。会社側からの慰留もありましたが、自分のキャリアパスを考慮しつつ、経理経験を活かせばこういう厳しい状況であっても転職できるという自信もあったことから、転職を決意しました。正直、この後の3ヶ月こんなに苦しむとは思いませんでしたが…。
早期退職に応募したのが、昨年の12月初旬、引継ぎを含めた退職日が2月末日となりましたので、2月中に内定をとるべく活動を開始いたしました。4年ほど前にも、紹介会社経由で転職をした経験があったことから、まずはその紹介会社に登録をしました。感覚的には2ヶ月くらいで決めた記憶があるので、とにかく応募をして…というスタンスで今回の活動もスタートしました。しかし、本当に書類選考が通らない。通っても一次面接が通過できないと開始後の1ヶ月はぼろぼろの状態でした。
(経理財務マネージャー・36歳男性)
解説
体験談その1のケースと似ているが、転職が複数回、年齢などの面でこちらのケースの方がより苦労していることが分かる。
現在はすでに変わってきているが、10年ほど前はまだ35歳が採用条件のボーダーラインという企業もまだ多く残っていたため、転職が困難なった一面もあるだろう。
30代前後では2か月ほどで転職できていたとしても、30代後半、不況下、という条件では応募する求人数や転職活動にかかる期間は増えても当然、と考えておくべきだ。
同じような経験、同じようなスキルであれば年齢が低い方が採用されやすい、という傾向が、不況の中ではよりシビアに感じられることになるのだ。
体験談その3
企業が中途採用として転職からの採用を行う大きな目的のひとつは「即戦力の確保」だ。
転職活動では実務経験やスキルが有利になることが多いが、望まない退職によって、経験が不充分なままの状態で転職しなければならないということも起こり得るのだ。
体験談 不況による業績悪化で職歴が短いまま転職

前職は自動車部品メーカーでした。ご多分に漏れず、急速な不況により、社内システムの開発計画がすべて白紙撤回され、仕事がほとんど無くなった事がきっかけです。
以前、翻訳で食べていた事もあり、英語はそれなりに出来るのですが、社内SEとしては、年齢の割に職歴が短く、Windows系しか経験が無かったため苦労しました。
経歴が中途半端であるため、「もう少し若ければ、システムの保守運用の業務が見つかると思います」、「もう少しWindows系以外で経験があれば、社内SEの業務が見つかると思います」と、複数の人材紹介会社の方に言われ、なかなか面接までたどり着けませんでした。
(社内SE・36歳)
解説
全体の求人案件数が少なくなり、応募するための要件もシビアになっていくと、経験が足りない、保有資格がない、といった理由で応募の時点で苦戦することも起こりやすい。
採用企業の担当者や配属要諦部署の責任者は、特に中途採用にあたっては求人票記載事項のうち特に応募要件の欄をどうするかに神経を使っている。
○○の経験〇年以上や、資格、ツールやソフトなどの実務使用経験、販売した製品や経験業界など、求人企業の「どんな人に来て欲しいか」が集約されていると言ってもいいだろう。
不況の中では特に、そこに記載されている要件以上に内々でハードルが設けられているため、要件を見て応募しても通りにくい、ということが起こりやすいのだ。
体験談その4
転職前から仕事が忙しく転職活動になかなか時間が割けないという人は転職エージェントを利用したいところだが、それでも時間がかかる。
「こんなに忙しいのに給与が下がった」など転職のきっかけがあったとしても、不況の中では転職活動自体に時間がかかり我慢を強いられる状況もあることを知っておこう。
体験談 希望職種の求人が少なかったが粘り強く転職成功

前職企業の業績不振と、それによる給与見直しによって、転職を決意。活動を行いました。
このご時世、なかなか希望職種の募集を行っておらず、転職活動に思った以上に時間がかかりました。また、現職の仕事が忙しく、思い通りに時間を作れなかった点も大きな障害でした。そこで、人材紹介会社の方からいろいろと企業を紹介・アプローチしていただき、忙しい中でしたがなんとか時間を作り、希望の職種に転職することができました。
(中略)
何社かは最終面接まで行きましたが、結果としては人材に投与するコスト面で承認が下りず採用を見送られるケースが今回の転職活動で多く感じました。
世情が非常に反映されてるケースが多く思います。
(医療業界・32歳)
解説
リーマンショックほどの不況では、求人1名の枠に対して応募者が多くなるため選考が厳しく、また、時間もかかる。
また、求人案件の中には「ベストマッチの人材がいない場合は採用なしもやむなし」というものもあり、応募者にとっては苦しい状況だろう。
特に転職エージェントを利用した採用では、企業が採用者の想定年収の30%以上を転職エージェントに支払う必要があるため、一時的な支出や固定費の増加の両面から採用を取りやめにすることもある。
たった1名の採用でも、企業にとってはその人にかかる年収分が固定費増になるため、この時期の採用には慎重にならざるを得ないということが分かるだろう。
体験談その5
不況のタイミングで転職できた場合もそれがゴールではなく、転職先が不況の影響を受けることもある。
全く異なる業界や業種では転職が不利になるため、多くの場合は同じ業界や業種を選択するのだが、同じ業界内で同じように景気悪化することは想像に難くないはずだ。
体験談 転職直後に人員整理で退職

転職して入社した会社が、ちょうどリーマンショックの影響を受けて業績が急降下。試用期間にて、会社都合での退職となりました。
製造業だと「メーカー経験者を優先する」や「配置転換をしたので中途採用は一旦ストップ」という企業が多く、案件も少なかったために一つの案件に対して数十人がエントリーする会社もあり、書類選考で通過しても一次選考で「相対的な比較」で見送りになることが多かったです。
(財務・27歳)
解説
通常であればさほど意識しなくてもよい入社後3か月から6か月ほどの試用期間だが、不況下では「人員整理の対象になりやすい時期」と思っていた方が良い。
法的には入社して2週間を超えた時点で、他の社員と同じ解雇要件になるのだが、人員整理となれば数年就業して仕事の要領を知っている社員と試用期間中の社員であればどちらを残すかは明白だ。
当然2週間を超えていれば正規の解雇予告手当を受け取ることはできるが、その経費を捻出してでも人件費を削減する必要が企業にあれば実行される可能性はある。
繰り返しにはなるが、特に不況下の内定はゴールではないため、転職先候補の企業やその業界の情報収集や見極めは欠かせない。
体験談その6
年齢やポジションにもよるが、通常時に比べて面接までたどり着くことが難しくなるのも不況下の転職活動だ。
こうした場合は複数の転職エージェントなどに登録しつつ、自身で応募状況を管理した上で応募数を増やして面接に繋げるのも方法のひとつだ。
体験談 人員整理で退職後、多くの応募から面接した

今回の転職は望んだ転職活動ではなく、会社都合による退職でやむを得ず転職活動をすることになりました。
今回の転職活動は、会社都合による退職のためやむを得ない状況でした。ただ、紹介会社を活用しての転職活動は今回で3回目になるので比較的スムーズに転職活動は進みました。
しかし、不況ということもあり、前回の転職活動と違いスカウトメールがほとんど来ません。結局、一括エントリーで100社以上の紹介会社へアプローチを行いました。その中でも、面談していただける紹介会社に、出来る限り足を運び企業を紹介して頂きました。(登録した紹介会社は38社)
(中略)
応募社数は40社近くになり、面接も10社ほど受けた中で、以前紹介して頂いた紹介会社から新規の案件を紹介頂きました。その案件で、内定までトントン拍子に進み、3月1日付けで入社することが決まりました。
(経営管理部課長・45歳)
解説
就職や転職はタイミングで決まることも多々あるが、企業が倒産したり人員整理を行ったりしている状況ではそのタイミングが巡ってくるのも難しくなっている。
転職自体は決して運や確率で決まるものではないが、自身とマッチする求人案件が、自分の転職活動している時に出ているかどうかといえば、タイミングに左右されることはある、と言えるだろう。
求人案件自体が少ない状況では、転職活動の期間を長くしてそのタイミングを待つか、応募数を多くして希望に近い求人案件と出会うか、という方法に概ね絞られる。
自身の希望とする職種や給与額を安易に妥協することはおすすめしないが、選択肢を広く持って積極的に応募していくことで不況下でも理想に近い職場に出会う可能性は高くなるだろう。
リーマンショックと転職の教訓
ここまで2008年から2009年頃のデータや体験談を紹介し、当時の様子や転職市場への影響を見てきた。
そこで、その前例に学び、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている現在に活かせるように、慎重になるべきことやしておいた方がいいことなどを挙げていく。
噂話や根拠のない不安に振り回されることのないよう、過去の経験に学んで失敗のない転職活動を実現して欲しい。
求人案件が少なくなる
不況の影響を受けた転職市場では求人案件が少なくなることが、リーマンショックでも分かっている。
不況下の企業にとって、求人から採用のコスト、採用人数分の給与にあたるコストの増加などを支出することが難しくなるためだ。
また、中には求人を出していたものの取り下げになるケースなどもあり、求人倍率は低下(応募者に対して求人案件が少ない)する。
求人案件が少なくなると応募者が増えて選考基準がシビアになり、また、選考にかかる日数が長くなるため、転職のしやすさという点からも求人案件数や求人倍率の推移は見ておいた方が良いだろう。
通常に比べて時間がかかる
不況の影響を受けた場合、転職に要する期間が長くなる傾向があるため、退職の時期やタイミングを見誤らないことが大切だ。
応募者が転職に対して慎重になるのと同じように、企業側も、シビアな予算の中、時間がかかってでも本当に必要でベストマッチな人材だけを採用したい、という風に慎重になるためだ。
また、1つの求人案件に対して応募者が多い、人事や採用の担当者が人員整理を含めた人事計画の立て直しに追われているなど、様々な理由で選考ステップのひとつひとつに時間がかかることもある。
人員整理などやむを得ない場合を除いては、退職してからではなく、就業しながら転職活動をすることを前提に、3か月~1年などある程度の期間を想定して転職活動することをおすすめする。
転職の動機、自身の強みをより明確に
1つの求人案件に対して応募者が多くなるため、書類選考で採用担当者の目に留まる、自身の強みが重要になる。
不況下でも求人を出している企業にとって、その求人案件の必要性が通常時より高いため、用意している仕事内容に合致しているか、期待以上かを求めているのだ。
そこでまず多くの応募がある書類選考を通過するために、求人企業が求める「応募要件」をクリアし、それに沿って自身の強みをアピールすることが大切だ。
また志望動機についても、なぜ、このタイミングで転職するのか、自己PRを踏まえて明確にしておこう。
長期就業がプラスになることもある
周囲や転職市場、転職先の情報を把握したうえで「今は転職しない」という選択肢もあると考えておこう。
就業先の業績悪化による人員整理など、避けるのが難しい状況でなければ、現在の職場で経験やスキルを磨き、自身の市場価値を高めることに注力してから転職しても遅くはない。
転職回数が多くなることや勤続年数が短いことを良く思わない企業はまだ多くみられる。
不況下では特に、自身にとって退職の動機や転職の目的が明確にならないうちは安易に転職せず、転職しないという判断もあるということを心に留めておこう。
まとめ
リーマンショックと転職市場や転職活動に対してあった影響を説明した。
注意すべき点はあるが、慎重になり過ぎることなく目標や計画を明確に持って転職活動に取り組むことでより理想に近い転職が実現できるはずだ。
記事を振り返ってまとめるので参考にして欲しい。
リーマンショックと影響
リーマンショックとは何か、その影響と併せておさらいする。
「リーマンショック」とは
- 2008年アメリカの住宅バブル崩壊、リーマンブラザーズ倒産を機に広まった世界的不況
- 中低所得者層(サブプライム層)向け住宅ローンが住宅バブルの崩壊で破綻
- サブプライムローンを扱っていた大手証券会社のリーマンブラザーズが倒産
- リーマンブラザーズの取引先であった世界中の金融機関や投資家に大きな損失
- 経済不安や連鎖的な倒産が世界中に広がり景気の後退を引き起こした
日本の企業に与えた影響
- 日本でも2008年の全国倒産件数は15,000件を超える
- 景気が上昇しない中で予測不能なきっかけが原因など、新型コロナウイルスによる影響と似ている点もある
リーマンショックと転職
2009年の転職実績は前年比50%ほどにダウン
- 大手3社の転職実績(数)の推移からリーマンショックの影響を見てみる
- リーマンショック後は転職実績数が軒並み半数以下まで落ち込んでいる
- リーマンショック前の7割程度に戻るまでリーマンショックが起こってからおよそ3年かかっている
- 慎重になり過ぎてタイミングを逃せば向こう数年厳しい状況が続くこともある
- 40代の転職実績には日本のバブル崩壊の影響もあり、不況以外にも様々な要因が関係している
転職の動機や転職先を選んだ理由にも変化
- 転職者自身は、不況が始まって半年後からより影響を感じ始めている
- データを見る限りでは早く行動を起こした人の方が比較的不景気の影響を感じることなく転職活動ができている
- リーマンショックが起こってから2年後少しずつ景気の悪さを感じる人が減り始めている
(転職活動に不景気の影響があったと感じた具体的なコメント)
- 企業の選考基準や人事計画が厳しくなったため書類選考だけで落とされるケースが多い
- 求人に対して応募者が多いなどの理由で選考に時間がかかる
- 企業側が未経験を歓迎しなかった
- 求人案件が極端に少なかった、求人案件の取り止めもあった
- 今までの仕事が続けられなくなったため転職したくなかったが転職活動をした
体験談から不況時の転職について知る
早期退職、苦戦しながら2か月ほどで転職できたケース
- 不況の中でも求人を出せる企業、案件や条件などをしっかり吟味して転職のアプローチを行った
- 厳しい情勢で2か月、3社の最終面接から内定に結び付けられたことは上出来といっていい
書類選考、一次選考が通りにくく転職活動に約3か月かかったケース
- 転職が複数回、36歳という年齢から前のケースよりやや苦労している
- 不況下では特に同じような経験、同じようなスキルであれば年齢が低い方が採用されやすい傾向がある
不況による業績悪化で職歴が短いまま転職したケース
- 採用企業の担当者や配属要諦部署の責任者は、特に応募要件の欄をどうするかに神経を使っている
- 不況の中では特に、そこに記載されている要件以上に内々でハードルが設けられていることが多い
希望職種の求人が少なかったが粘り強く転職成功したケース
- 求人1名の枠に対して応募者が多くなるため選考が厳しく、時間もかかる
- 求人案件の中には「ベストマッチの人材がいない場合は採用なしもやむなし」というものもある
転職直後に人員整理で退職したケース
- 入社後の試用期間は、不況下では「人員整理の対象になりやすい時期」と思っていた方がよい
- 不況下の内定はゴールではないため、転職先候補の企業やその業界の情報収集や見極めは欠かせない
人員整理で退職後、多くの応募から面接に繋げたケース
- 自身とマッチする求人案件が、自分の転職活動している時に出ているかはタイミングもある
- 求人案件自体が少ない状況では、転職活動期間の長さか、応募数を多くして希望に近い求人案件と出会うか
- 選択肢を広く持って積極的に応募していくことで不況下でも理想に近い職場に出会う可能性は高くなる
リーマンショックと転職の教訓
求人案件が少なくなる
- 不況の影響を受けた転職市場では求人案件が少なくなる
- 中には求人を出していたものの取り下げになるケースなどもある
- 求人倍率が低下(応募者に対して求人案件が少ない)する
- 求人案件が少なくなると応募者が増えて選考基準がシビアになる
- 求人案件が少なくなると選考にかかる日数が長くなる
通常に比べて時間がかかる
- 転職に要する期間が長くなるため、退職の時期やタイミングを見誤らないことが大切
- 不況下の求人企業は特に、時間がかかってでも本当に必要でベストマッチな人材だけを採用したい
- 不況下では選考ステップのひとつひとつに時間がかかることもある
- 就業しながらの転職活動を前提に、3か月~1年などある程度の期間を想定して転職活動するのがおすすめ
転職の動機、自身の強みをより明確に
- 書類選考で採用担当者の目に留まる、自身の強みが重要になる
- 企業にとって、用意している仕事内容に合致しているか、期待以上かを求めている
- 志望動機についても、なぜ、このタイミングで転職するのか、自己PRを踏まえて明確にしておく
長期就業がプラスになることもある
- 「今は転職しない」という選択肢もある
- 現在の職場で経験やスキルを磨き、自身の市場価値を高めることに注力してから転職しても遅くはない
- 退職の動機や転職の目的が明確にならないうちは安易に転職せず、転職しないという判断もある
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