毎日残業、時々休日出社、たまの休日はとにかく寝る、毎日自宅と職場の往復だけ。
2017年に「働き方改革関連法」が施行されても少しも変わらない、もう疲れた……、と思っている人はまだまだ多い。
また一方では、仕事にやりがいが見いだせない、毎日職場で退屈を感じている、という人も少なくないはずだ。
これらは転職を考えるきっかけになることも多く、そのどちらも「ワークライフバランス」が転職で実現したい重要な課題だと言うことができるだろう。
「労働時間が多すぎる人が転職して定時退社できるようになる」といった例ばかりが「転職によるワークライフバランスの実現」と思われがちだが、それだけではない。
政府が進めている働き方改革では、ワークライフバランスについて次のように書かれている。
(内閣府【「仕事と生活の調和」推進サイト】「仕事と生活の調和とは」より抜粋)
仕事のやりがいや喜び、プライベートの充実、この両方が揃って「ワークライフバランス」の実現なのだ。
現在の職場でワークライフバランスの実現が難しい場合は、ワークライフバランスが実現できる職場、企業へ転職する選択も大いにアリだろう。
そこで、企業の人事、採用担当として中途採用や働き方の実務に携わってきた筆者が、ワークライフバランスの実現を目的にした転職について詳しく解説する。
転職先の選び方から、面接でワークライフバランスを重視したいことを上手に伝えるポイントまで伝授するので、ぜひ参考にして欲しい。
転職とワークライフバランス
冒頭でも触れたように、ワークライフバランスとは、暮らしと仕事、そのどちらも充実させることが理想だ。
では、どのようなケースでワークライフバランスを目的とした転職が考えられるのかを考えてみたい。
第一の目的でなかったとしても、ここで解説するケースに当てはまると感じたらワークライフバランスの実現も視野に入れて転職活動をしていくことをおすすめする。
ワークライフバランスが重視されるケース5つ
ここでは、消極的な理由でワークライフバランスを重視するケースではなく、積極的な理由や必要とされる場面で重視されるケースについて解説する。
消極的な理由とは、前職や現在の職場で長時間労働や休日出社に悩んでいるなどの場合で、こうした状況での転職は当然それらを解消するためのものになるからだ。
積極的な理由や必要とされる場面でワークライフバランスを重視するケースには次のようなものがある。
ワークライフバランスを重視するケース5つ
- ①ケース1:主に女性が求めるライフステージ重視の転職
- ②ケース2:ライフイベントとキャリアを両立させたい転職
- ③ケース3:学ぶ時間を確保したいキャリア重視の転職
- ④ケース4:仕事のやりがいも重視したいバランス型転職
- ⑤ケース5:自由な働き方を視野に入れた転職
①ケース1:主に女性が求めるライフステージ重視の転職
ワークライフバランスを重視するケースとしてまず挙げられるのが、主に働く女性のためのワークライフバランスだろう。
女性は男性に比べ、結婚や出産、育児といったライフステージと、就業状況や雇用形態など、時間や期間に融通が利く働き方が深く関係しているからだ。
※参考(内閣府男女共同参画局「女性のライフステージと就業」)
ただし、現在多くの働く女性がライフステージの変わり目で「一旦退職する」「パートなど非正規雇用に就く」などキャリアを中断する判断をしている実態がある。
キャリアを継続させたい女性のために、産休・育休制度の実績がある企業、現場復帰が可能な企業への転職はワークライフバランスを重視する上で欠かせない条件と言えるだろう。
②ケース2:ライフイベントとキャリアを両立させたい転職
ライフイベントによってワークライフバランスを重視するケースは女性だけに限らない。
育児から家族の介護まで、既婚者でも未婚者でも、生活の中で仕事以外の時間を確保することが求められる場面があるからだ。
例えば夫婦2人の世帯であれば家事の分担ほどの負荷でも、出産や育児では、病院への付き添い、日々の送り迎えや学校行事などが生じる。
また独身であっても、介護が必要な家族ができれば、病院や介護施設への付き添いなど、時間や労力の確保が必要な時期があるはずだ。
こうした生活環境の変化、ライフイベントを機に転職するケースも多く、ワークライフバランスを重視した転職が必要と言えるだろう。
③ケース3:学ぶ時間を確保したいキャリア重視の転職
特に20代から30代にかけて、自身のキャリアを高めたいという人にとってもワークライフバランスは重要なポイントだ。
もちろん仕事を通じて学べること、経験を通じて身につくことは多いが、先のキャリアを考えるなら自己投資できる時間を確保することが大切だ。
例えばマネジメントや技術職の専門知識をより早く豊富に身につけたい場合は、社外のセミナーや研修の受講、資格取得などが有効であることは言うまでもない。
社内で研修制度や資格取得支援がある企業、夕方から社外セミナーの受講が可能な環境など、自分を磨く時間を確保するための転職は価値が高いと言っていいだろう。
④ケース4:仕事のやりがいも重視したいバランス型転職
繰り返しにはなるが、ワークライフバランスは生活や暮らしを重視するだけでなく、仕事のやりがいや充実を目指す一面もあり、いわゆる働き盛り世代の転職に見られるケースだ。
休養や余暇が適切に取れることで仕事のパフォーマンスも高まり、オン・オフ共に充実することができるワークライフバランスの理想形のひとつと言っていい。
このバランス型を目指す場合は、自分に合った仕事、達成可能なチャレンジのある仕事、満足感を感じられることなど、仕事内容や待遇面も考慮した転職先選びが重要だ。
どちらかと言えば自身の経験を活かすことができ、ライフイベントが落ち着きつつある30代後半~40代頃の転職で求めやすいケースだと言えるだろう。
⑤ケース5:自由な働き方を視野に入れた転職
場合によっては正社員としての転職以外も含まれるが、自身のスキルや資格を活かして時間に拘束されない働き方を獲得できるケースもある。
テレワークやサテライトオフィスを利用できる企業への転職が可能であれば、最低でも通勤時間は大幅に削減でき、仕事以外の時間も確保できるはずだ。
デメリットとしてはまだ対応している企業がごく一部であることや、フリーランスや業務委託契約など、正規雇用でない場合は収入の安定感に欠ける点だ。
ITやWebデザインなどのクリエイティブ系など一部の職種を中心に徐々に増えてきており、近い将来の働き方として視野に入れておくのもいいだろう。
ワークライフバランスを実現しやすい業種・業界
ライフイベントや近い将来のキャリアなどワークライフバランスを意識する動機は様々だが、それを実現しやすい業種や業界もある。
職場によっても差があるもののその傾向から転職先を選ぶ際の参考にして欲しい。
職種別・労働時間ランキング
ワークライフバランスを重視する中で最も気になる労働時間について職種別に見てみよう。
元のデータは大手転職サイトのdodaが公開している調査データを参考に「年間労働時間の少ない職種」を30位までランキングにした。
総合 | 平均残業時間 | 年間休日 | 職種 | 職種 | ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
少ない | 時間 | 多い | 日数 | 小分類 | 大分類 | ||
90業種平均 22.8 121.9 (ランキング基準点は残業ゼロ・年間休日は平均) 100.00% | |||||||
1位 | 7位 | 12.7 | 1位 | 140.2 | CAE解析 | モノづくりエンジニア | 100.31% |
2位 | 3位 | 9.3 | 26位 | 126.1 | 貿易業務 | 企画管理 | 104.01% |
3位 | 2位 | 8.3 | 46位 | 123.0 | 翻訳/通訳 | 事務・アシスタント系 | 104.67% |
4位 | 5位 | 11.0 | 31位 | 125.4 | 秘書/受付 | 事務・アシスタント系 | 105.35% |
5位 | 10位 | 13.9 | 12位 | 129.5 | 社内SE | ITエンジニア | 105.45% |
6位 | 1位 | 8.1 | 60位 | 120.4 | 一般事務 | 事務・アシスタント系 | 105.61% |
7位 | 4位 | 9.3 | 57位 | 121.3 | オペレーター | 事務・アシスタント系 | 105.99% |
8位 | 8位 | 12.9 | 30位 | 125.6 | 品質管理/品質保証 | 医療・食品・化学 | 106.44% |
9位 | 47位 | 23.8 | 2位 | 139.8 | 工業デザイン | クリエイティブ系 | 107.32% |
10位 | 17位 | 16.1 | 22位 | 126.8 | 品質管理/品質保証 | モノづくりエンジニア | 107.92% |
11位 | 19位 | 16.3 | 21位 | 126.9 | ヘルプデスク | ITエンジニア | 108.00% |
12位 | 16位 | 16.1 | 25位 | 126.4 | 貿易事務 | 事務・アシスタント系 | 108.08% |
13位 | 27位 | 19.8 | 7位 | 131.4 | 生産技術 | モノづくりエンジニア | 108.31% |
14位 | 11位 | 15.0 | 47位 | 123.0 | 運用(ディーラー/アナリスト) | 金融系専門職 | 108.80% |
15位 | 20位 | 16.8 | 29位 | 125.6 | 法務 | 企画管理 | 108.84% |
16位 | 43位 | 23.0 | 4位 | 134.4 | 先行開発/製品企画 | モノづくりエンジニア | 109.05% |
17位 | 13位 | 15.8 | 45位 | 123.0 | 金融事務 | 金融系専門職 | 109.30% |
18位 | 39位 | 21.9 | 6位 | 132.1 | 購買 | 企画管理 | 109.32% |
18位 | 28位 | 19.9 | 13位 | 129.1 | 研究開発 | 医療・食品・化学 | 109.32% |
20位 | 9位 | 13.9 | 62位 | 119.9 | 薬剤師 | 医療・食品・化学 | 109.40% |
21位 | 12位 | 15.6 | 54位 | 121.9 | 総務/庶務 | 企画管理 | 109.63% |
22位 | 15位 | 16.0 | 52位 | 122.1 | 営業事務 | 事務・アシスタント系 | 109.79% |
23位 | 26位 | 19.8 | 17位 | 127.6 | 生産管理 | モノづくりエンジニア | 109.87% |
24位 | 18位 | 16.1 | 56位 | 121.6 | 経理 | 企画管理 | 110.06% |
25位 | 31位 | 20.3 | 18位 | 127.3 | バックオフィス/ミドルオフィス | 金融系専門職 | 110.30% |
26位 | 23位 | 18.7 | 33位 | 124.8 | 財務 | 企画管理 | 110.35% |
27位 | 45位 | 23.2 | 8位 | 130.7 | エンジニアリング | モノづくりエンジニア | 110.70% |
27位 | 34位 | 20.8 | 19位 | 127.1 | 人事 | 企画管理 | 110.70% |
29位 | 42位 | 22.7 | 11位 | 129.5 | 研究開発 | ITエンジニア | 110.88% |
30位 | 22位 | 17.8 | 58位 | 120.9 | 製造技術/設備技術 | 医療・食品・化学 | 111.39% |
※「残業ゼロ・平均の年間休日」から算出した年間労働時間を「ランキング基準点」とした
※データ元(doda)より90業種についてポイント算出、上位3分の1を30位まで少ない順にランキング
※「年間労働時間」=「稼働日数」(365日-「年間休日」)×8h(仮定)+(平均残業時間×12か月)
労働時間が少なめの事務・アシスタント系職種
残業の少なさ、休日の多さから見て、全体的には「事務・アシスタント系」の年間労働時間が最も少ない。
これらの職種では中長期的な案件を扱うことが比較的少ないため、週休2日、祝日休みで、残業も少なく抑えることができる。
またこれらの職種には女性歓迎求人も多いため、ライフステージ重視型の働く女性が選びやすい職種と言えるだろう。
さらに外国語をはじめ、貿易や契約書類の知識などを身につけることで継続的なキャリア形成も望めるはずだ。
ITエンジニアでは社内SEに注目
IT系職種やクリエイティブ系職種は労働時間が長い傾向があるが、社内SEはIT系職種の中でワークライフバランスが実現しやすいことで人気職種にもなっている。
これは請負や自社開発のIT系企業が常にクライアントからの仕様変更や納期に追われがちなことに比べ、社内SEの方が仕様や納期に対してある程度の裁量を持つことができるからだ。
さらに、ソースコードを書いて納品するだけでなく、自ら構築したシステムが自社で使われるなど成果が見え、仕事への達成感の面でもメリットがある。
仕事のやりがいも重視したいバランス型の転職や、レベルアップを目指して自己投資の時間を確保できるキャリア重視の転職なども可能な職種と言えるだろう。
休日多めのモノづくり系職種
モノづくりエンジニアなど、もちろん企業にもよるが、製造業では他の業種と比較しても休日が多い傾向がある。
これは、製造ラインを細切れに止めるより一定期間停止する方が高効率なため、大手メーカーなど関連工場の休業に合わせるため、など、様々な理由から10連休クラスの長期休暇があるからだ。
ただし、工場の中でも生産設備の工事やメンテナンスにかかわる職種や、メーカーのサービスエンジニアなどはランキングに紹介した職種と比べて年間の労働時間が多い傾向にある。
年間休日が多い職種は、休日を上手に利用して資格取得を目指したい人、オン・オフのメリハリをつけて働きたい場合などに向いていると言えるだろう。
ワークライフバランス重視の転職には専門性や資格が有利
ランキングを見て分かるように、その多くは一定以上の経験や専門的な知識を持って転職することが有利な職種だ。
特にここに挙げた職種に関連する資格などを取得しておくことで、キャリア中断後の職場復帰や、継続的なキャリアアップを含め転職活動がしやすくなることは言うまでもない。
資格取得の目安として、民間資格より国家資格、手当たり次第ではなく職種を絞ってチャレンジしていくことをおすすめする
さらに英語をはじめとする外国語の習得は、自身の働き方の幅を大きく広げてくれるスキルといえ、身につけることができればワークライフバランス実現の大きな武器になるだろう。
優先すべきは休日か残業か? ライフスタイルと共に考える
休日が多く、有給休暇が取りやすく、残業も少ない、といった環境であれば文句なしなのだが、そのような業種や企業はまだまだ多くないため、総合的に見て判断することが重要だ。
単に月平均の残業時間、年間休日だけを見て「ワークライフバランスが実現できる」と転職してみたものの、理想と違ったというケースが少なからずあるのだ。
ワークライフバランスに関連して、総合的に確認すべき事柄をいくつか解説するので求人票を見る際には参考にして欲しい。
産休・育休の取得実績
求人票の中には「産休・育休取得実績の有無」を記載しているものがあり、特にワークライフバランスを意識した女性の転職では必ずチェックして欲しい。
これはその求人企業で過去に産前産後休業や育児休業の制度を利用した社員がいるかどうかを記載しており、当然「あり」になっている企業ほど安心して転職しやすい。
求人情報に記載していない場合はもちろんのこと、産休と育休は異なる制度のため、結婚や出産を視野に入れている転職では面接などで詳しく確認しておく事柄だ。
また、「なし」の場合であっても、たまたま該当の社員がいなかっただけ、といった企業もあるため、やはり面接の場や転職エージェントを通じて確認しておくべきだろう。
給与や手当、福利厚生などの待遇
給与や手当、福利厚生なども、残業時間や休日の日数と併せて総合的に判断するために欠かせない事柄だ。
特に事務・アシスタント系の職種では、就業時間や休日の面では恵まれているものの、相場より低い給与水準であることも少なくない。
転職にあたっては経験やスキルなど自分自身のセールスポイントを持つことと、キャリアを継続する意味のある転職にすることでワークライフバランスの実現がしやすくなる。
時間に余裕はあるが家計に余裕がないのでは、暮らしも仕事のやりがいも充実を感じにくくなるはずだ。
有給休暇の取りやすさ
有給休暇の取りやすさを知るには、面接での逆質問でポイントを押さえた聞き方を知っておくといいだろう。
「御社は有給休暇が取りやすいですか」といったストレートな質問では好印象にはなりにくい上に実情も掴みにくいからだ。
質問の仕方としては、「社員の皆さんは土日以外にどのくらいお休みを取られていますか」や「お休みの申請は何日前までのルールになっていますか」などが無難だろう。
休みが取りやすいかどうか、ではなく、ルールや実績について質問すれば具体的な回答しかないはずだ。
企業の中には「有給申請は3週間前まで」といった運用もあるため、確認しておくに越したことはない。
ライフスタイルを合わせることも大切
例えば、残業はほとんどないが他社と比べて年間休日が少なめの企業から内定を受けた場合など、ライフスタイルを合わせることが出来そうかイメージしてみて欲しい。
繰り返しになるが、休日が多く残業も少ない、という恵まれた環境は少なく、また、仕事内容や待遇などが魅力的な企業が休日と残業どちらも希望通りとは限らない。
ほぼ毎日定時であれば、今までは週末にしていた部屋の掃除を平日に回して、週末は旅行や休養に使うようにしよう、など、自分自身でも工夫すれば選択肢は広がる。
ワークライフバランスはその全てを企業側が用意してくれるものではなく、用意された環境を踏まえて、自分自身で実現させるものだと考えるのが良いだろう。
ワークライフバランスが転職理由でも問題ない?
近年では特に、ワークライフバランスを目的にした転職は当然とも言えるのだが、求人企業側の本音は転職理由として手放しで歓迎している訳ではない。
もちろん法令や一般的な水準は守りつつも「暮らしよりも仕事を優先してくれる従業員」を望んでいることは否定できない。
自身の希望により近い条件の転職ができるように、ワークライフバランスが転職理由であることを印象良く伝える方法を伝授しよう。
印象の良い伝え方の原則3つ
面接や履歴書で「志望動機」や「転職理由」を伝える際に印象を良くする原則3つは次の通りだ。
印象の良い伝え方の原則3つ
- 原則①前向きであること
- 原則②具体的であること
- 原則③実現可能であること
ここでは志望動機や転職理由について解説するが、この3つは面接全体を通じて好印象を与えるアピールの原則なので、ぜひ参考にして欲しい。
原則①前向きであること
転職理由では、前職(現在の職場)の不足や不満、転職先が何をしてくれるか、などではなく、「自分がどうなりたいか」を軸に前向きな目的を伝えるのが良い。
ここでは「なぜ現在の職場を離れ、応募先の企業に入社したいのか」という、退職の理由と応募先への志望動機の両面があることがポイントだ。
実際の面接では、言い方に多少の差はあっても、残業が多かったから少なくしたい、給与が低かったから高くしたい、といった転職理由が意外なほど多い。
「仕方なく」感のある転職理由ではなく、環境が変わることで自分のパフォーマンスが向上する、仕事のやりがいが増す、やりたかった仕事ができる、といった前向きさが好印象に繋がるのだ。
原則②具体的であること
前向きな転職理由について説得力を高めるためには話の中身が具体的である必要がある。
ワークライフバランスの考え方自体が人それぞれ、企業によっても異なるため、自分が何を求めていてその結果何ができるのかを具体的に伝えるのがポイントだ。
この記事でも解説しているように、「結婚や出産を経ても専門知識を活かしたキャリアで長く御社に貢献したいので、育児休業取得実績のある御社を選んだ」などは説得力がある。
まだワークライフバランスに対して否定的なイメージを持った経営者も少なくないため、「利己的」というイメージで捉えられないためにも具体性が必要なのだ。
原則③実現可能であること
具体的な転職理由を伝えるためには、それがその転職先で実現可能かどうか、出来る範囲で確認しておく必要がある。
どの応募先も同じように自分の考えるワークライフバランスの理想を伝えても、求人企業が会社のルールや制度を応募者ごとに変えてくれるわけではない。
休日が多いが残業は多め、年間休日は少ないが有給休暇が取得しやすいなど企業によって異なるため、それを出来る範囲で下調べをした上で具体的な理由とすべきだろう。
実際の面接でも会社の制度にない事柄を希望する応募者がいるが、それが具体的であるほど求人企業は「ご希望に沿えない」という判断になってしまうのだ。
転職理由にできる「ワークライフバランス」
ワークライフバランスを転職理由にする場合は、前述で挙げた「ワークライフバランスが重視されるケース5つ」に当てはまるかどうかを再確認して欲しい。
ワークライフバランスを重視するケース5つ
- ①ケース1:主に女性が求めるライフステージ重視の転職
- ②ケース2:ライフイベントとキャリアを両立させたい転職
- ③ケース3:学ぶ時間を確保したいキャリア重視の転職
- ④ケース4:仕事のやりがいも重視したいバランス型転職
- ⑤ケース5:自由な働き方を視野に入れた転職
これも繰り返しになってしまうが、“積極的な理由や必要とされる場面”であればワークライフバランスを転職理由にしても差し支えない、ということだ。
何となく、残業が少ない方がいいな、休みは多い方がいいな、といった動機であればワークライフバランス以外の転職理由にしておく方が良い。
ただ、自分が求めていることと求人企業の用意できる環境や条件を出来る限りマッチさせたいのであれば、その「求めていること」を転職理由にすべきなのは言うまでもないだろう。
実際の採用面接の現場であった転職理由から、好例をもとにポイントを伝授する。
生活の変化をきっかけにした転職
親の介護で実家に戻る必要が生じたため転職、といった生活の変化を伴うケースは珍しくなく、ワークライフバランスを転職理由にする代表的な例だろう。
育児でもそうだが、転職に至る理由だけでなく入社後の残業や有給休暇なども考えて転職活動をする必要があるため、誰が聞いても納得できる転職理由といえる。
こうした場合は、自分の実情だけを訴えるのではなく、数ある企業の中でなぜその応募企業を選んだのか、と言う点を併せて転職理由(志望動機)にすることをおすすめする。
ワークライフバランスを重視する理由は納得できるが、仕事に与える影響がどの程度のもので、その中で自身がどう仕事に取り組みたいのか、意欲をアピールすることも忘れないようにしよう。
時間を有効活用するノウハウをアピール
ワークライフバランス実現のために平均残業時間が少ない企業を選んだ場合は、理由と併せて時間を有効活用できることをアピールするのが良いだろう。
単に「残業しない方針」の応募者か、「残業に頼らない働き方ができる」応募者かでは、同じワークライフバランスの転職理由でも全く印象が異なる。
日々の時間配分の計画やスケジュール管理など、これまでのキャリアで実践してきた時間の使い方を踏まえて、オン・オフのメリハリのある仕事がしたい、という理由ならば納得だ。
残業手当などのコスト削減やホワイト企業化への取り組みなど、企業にとってもメリットのある「残業なし」が期待できるならむしろ高評価と言っていいだろう。
休日や休暇が多いことのメリットを考える
休日や休暇が多いことのメリットや残業が少ないことで得るものなど、自分なりの考えを用意しておいた方が良い。
ワークライフバランスを転職理由に挙げたほとんどの場合、「なぜワークライフバランスを重視するか」という質問は避けられないからだ。
資格取得に挑戦する、などの回答が具体的な資格の名称と併せてアピールできればもちろん高評価だが、リフレッシュの仕方や、リフレッシュして仕事にどう反映させるかを回答したいところだ。
休日が多いことや残業が少ないことをゴールにするのではなく、それによって仕事にどう取り組むかをメリットとして答えることが出来れば模範解答と言えるだろう。
まとめ
ここまでワークライフバランスを実現するための転職にはどのようなものがあるか、ワークライフバランスを実現しやすい業界や業種について紹介した。
また、実際の面接でワークライフバランスを転職理由にして印象を損なわない伝え方についても伝授した。
政府も後押ししているが、まだワークライフバランス実現のためには自分で転職先を吟味することも必要なのが実態だ。
記事の内容をおさらいして転職活動に役立てて欲しい。
転職とワークライフバランス
理想のワークライフバランスとは、暮らしと仕事、そのどちらも充実させること。
ワークライフバランスが重視されるケース5つ
①ケース1:主に女性が求めるライフステージ重視の転職
- 女性は男性に比べ、ライフイベントと融通が利く働き方が深く関係している
- 産休・育休制度の実績がある企業、現場復帰が可能な企業は欠かせない条件
②ケース2:ライフイベントとキャリアを両立させたい転職
- 育児や家族の介護など、仕事以外の時間を確保することが求められる場面がある
- 男女問わず、生活環境の変化、ライフイベントを機に転職するケースも多い
③ケース3:学ぶ時間を確保したいキャリア重視の転職
- 特に20代から30代にかけて、自己投資できる時間を確保することも大切
- 資格取得など、自分を磨く時間を確保するための転職でキャリアアップを狙う
④ケース4:仕事のやりがいも重視したいバランス型転職
- 仕事のやりがいや充実を目指す一面から、いわゆる働き盛り世代の転職に見られるバランス型
- 自分に合った仕事、満足感など、仕事内容や待遇面も考慮した転職先選びが重要
⑤ケース5:自由な働き方を視野に入れた転職
- 自身のスキルや資格を活かして時間に拘束されない働き方を獲得できるケース
- テレワーク、フリーランス、業務委託契約など、正規雇用でない働き方も視野に入れる
ワークライフバランスを実現しやすい業種・業界
労働時間が少なめの事務・アシスタント系職種
- 女性向け求人も多い「事務・アシスタント系」の職種は年間労働時間が最も少ない
- 外国語や専門知識などを身につけることで継続的なキャリア形成も望める
ITエンジニアでは社内SEに注目
- IT系職種の中でも、社内SEは仕様や納期に対してある程度の裁量を持つことができることが多い
- 自分で作ったシステムが自社で使われるなど成果が見え、仕事への達成感の面でもメリットがある
休日多めのモノづくり系職種
- 製造業は他の業種や業界と比較して休日が多い傾向がある
- 休日を上手に利用して資格取得を目指したい人、オン・オフのメリハリをつけて働きたい場合などに向いている
ワークライフバランス重視の転職には専門性や資格が有利
- 仕事にかかわる資格を取得しておくと、転職活動がしやすくなる
- 民間資格より国家資格、手当たり次第ではなく職種を絞ってチャレンジしていく
優先すべきは休日か残業か? ライフスタイルと共に考える
休日や残業、全て申し分のない業種や企業は多くないため、労働条件を総合的に見て判断することが必要。
産休・育休の取得実績
- 求人票の「産休・育休取得実績の有無」は必ずチェック
- 「なし」の場合であっても、面接の場や転職エージェントを通じて確認しておく
給与や手当、福利厚生などの待遇
- 待遇も残業時間や休日の日数と併せて総合的に判断するために欠かせない事柄
- 転職にあたっては自身のセールスポイントを持つこと、キャリアを継続する意味のある転職にすること
有給休暇の取りやすさ
- 有給休暇を取りやすいかを聞く時は、取得のルールや実績について質問する
- 企業の中には「有給申請は3週間前まで」といった運用もある
ライフスタイルを合わせることも大切
- 残業は少ないが休日は少ない、といった場合も、自分自身でも工夫すれば選択肢は広がる
- 企業側も用意された環境を踏まえて、自分自身で実現させるものだと考えるのが良い
ワークライフバランスが転職理由でも問題ない?
- 求人企業側も本音では「仕事を優先してくれる従業員」を望んでいることは否定できない
- ワークライフバランスが転職理由であることを印象良く伝える
印象の良い伝え方の原則3つ
- 原則①前職への不満などではなく、前向きであること
- 原則②自分は何を求めていて何ができるか、具体的であること
- 原則③応募先企業にとって実現可能であること
転職理由にできる「ワークライフバランス」
生活の変化をきっかけにした転職
- 介護で実家に戻る必要が生じたため転職、といった生活の変化を伴うケースは珍しくない
- 自分の実情だけでなく、なぜその応募企業を選んだのか、と言う点を併せて伝える
ノウハウをアピール
- 転職理由と併せて時間を有効活用できることをアピールするのが良い
- 企業にとってもメリットのある「残業なし」が期待できるならむしろ高評価
休日や休暇が多いことのメリットを考える
- 「なぜワークライフバランスを重視するか」という質問は避けられない
- 休日の多さや残業が少ないことを通じて、仕事にどう取り組むことができるかをメリットとして答える
コメント・ご意見はこちらにお願いします