会社員として働いていると、税金等の手続きは会社任せにしてしまいがちだろう。
しかし、転職などによる退職をすると、自分で手続きをする必要がある。
会社に任せっきりにしていた場合、何をするべきなのかも分からないかもしれない。
この記事では、住民税と所得税をはじめとした給与天引きされているものの、退職後の手続きについて解説していこう。
税金や年金等の手続きをするには
- 住民税の場合は、自分で手続きをするのが一般的
- 収入に課税される所得税は、収入がない期間は払う必要がないため納付のための手続きは不要である
このように、同じく「給与天引きされているもの」であったとしても、手続き方法はそれぞれ。
この記事を読んで、適切な手続きをおこなってほしい。
意識せず払っていた税金の手続き方法
会社員として在籍していたときは、税金のことを意識せずとも支払いがおこなわれていたはずだ。
給与明細に金額は載っていても、深く理解せずにいる人も多いのではないだろうか。
しかし、転職するのであれば税金についても理解しておく必要がある。
転職が決まるまでの期間は、自分で手続きをする必要があるからだ。
まずは、住民税と所得税の手続きについて順番に見ていこう。
住民税の手続き
はじめに住民税の手続きを見ていく。
先ほども話したように、会社に在職していた場合には給与から天引きされているが、退職をしたあとは自身で手続きする必要がある。
退職後の住民税の支払い方法は3つだ。
住民税の支払い方法3つ
(1)退職前の給与で残りを一括天引きする
(2)転職先で特別徴収してもらう
(3)普通徴収で納付する
(1)の「退職前の給与で残りを一括天引きする」場合には、事前に退職する企業の総務・人事担当者に頼んでおく必要がある。
企業によっては認められないこともあるので、できるかどうかを聞いておくと安心だろう。
(2)の「転職先で特別徴収してもらう」方法は、退職から期間を開けずに転職することが決まっている場合に使える方法である。
あなたの代わりに税金を払ってくれるわけではないので、勘違いしないでほしい。
(3)の「普通徴収で納付する」方法が、一番ポピュラーな納付方法だろう。
市区町村に退職した旨を伝えると、後日納付書が自宅に届く。
納付書を自分で銀行や郵便局、コンビニなどに持ち込み、期日までに支払う方法だ。
収入がない期間の住民税は減額されるのか
転職して給与額が変わったり、無収入になったりした場合、住民税の負担が変わるのか、気になるところだろう。
答えをいってしまうと、住民税の負担は変わらない。
住民税の納付額は、前年度の収入によって決められている。
したがって、退職・転職したからといって住民税額は変わらないのである。
もし収入が減ったり、無収入になったりした場合でも、納付するべき住民税の金額は変わらない。
すぐに転職先に就職する場合には問題ないが、働かない期間がある場合には納付額が不足しないように注意しよう。
所得税の手続き
続いて、所得税について見ていこう。
こちらも住民税同様、会社員時代は給与から天引きされているのが一般的。
収入がない期間は所得税を払う必要がないので、納付のための手続きは不要である。
しかし、払いすぎた所得税を取り戻すためには、手続きが必要だ。
会社が徴収した所得税は最終的に、年末調整で正確な金額を計算して納付(または返金)している。
再就職できた場合には源泉徴収票を提出することで、転職先で年末調整の手続きが可能。
一方で、求職中のまま年を越した場合には、確定申告をすることで納めすぎた分が戻ってくる。
転職活動の進み具合によって、手続き方法を選ぶようにしてほしい。
厚生年金や健康保険の手続き
ここまで、住民税と所得税について解説してきた。
次は税金ではないが、給与天引きされている厚生年金や健康保険の手続きについて見ていこう。
厚生年金も健康保険も、当月分を翌月に徴収するのが一般的である。
徴収されるタイミング
- 末日に退職する場合:2か月分(先月・当月)天引き
- 末日より前に退職する場合:1か月分(先月)天引き
退職した翌月すぐに転職する場合には問題ないが、そうでない場合は当月分が未納になってしまう。
あらかじめ手続きの方法を理解し、未納にならないよう注意しよう。
健康保険の手続き
健康保険はご存知の方も多いだろう。
病院などを利用する際、医療費を負担してもらうことができる制度だ。
会社員時代は、給与から保険料の半分を自分で負担、もう半分は会社が負担していた。
退職後は全額自分で支払う必要がある。
会社員時代は、会社が加入していた健康保険組合を利用していたはずだが、退職後は
- 退職する会社の健康保険を継続する(任意継続)
- 住んでいる地域の運営する健康保険に新たに加入する
を自分で選ぶことができる。
退職した次の日から新しい企業で働く場合には、その企業の加入している健康保険組合を利用することになる。
人事で手続きをしてくれるはずなので、自分で何かをする必要はない。
なお、任意継続を選ぶ場合には、退職から20日以内といった決まりがある。
退職する前に、健康保険組合の手続き方法を確認しておくのがベターだ。
厚生年金の手続き
続いて、厚生年金の手続きを見ていこう。
つまり会社員でない場合は、引き続き加入することができないのである。
転職先が決まっている場合には、年金手帳を見せることでそのまま移行できる。
一方、離職期間がある場合には継続ができない。
その場合には「国民年金」に加入する必要があるため、住んでいる市区町村の役所で手続きをおこなおう。
確定拠出年金(401k)に加入している際の退職時の手続き
近年では国民年金や厚生年金だけでなく、「確定拠出年金」を利用している人も多いだろう。
給付を受け取れるのは原則として60歳以降
それまでは金融商品の選択や、資産をどのように配分するかなど、自身で考えて運用していく。
ひと言で「確定拠出年金」といっても、実は2通りある。
確定拠出年金は2種類ある
- 企業が掛け金を支払う「企業型確定拠出年金」
- 個人で掛け金を支払う「個人型確定拠出年金」
このうち、企業が掛け金を支払っている企業型確定拠出年金を利用している人は、退職時に手続きが必要なので注意しよう。
企業型確定拠出年金に加入している場合の手続き
企業型確定拠出年金に加入している場合の手続きは、退職後の流れによって変わる。
まず、自営業や主婦(夫)、再就職までに期間があく場合には、個人型の確定拠出年金に資産を移すことができる。
個人型の確定拠出年金を利用するためには、専用の口座が必要になる。
あらかじめ使いやすい口座を開設しておこう。
その際「移換する年金資産がある」ということを伝えるといいだろう。
詳しい手続きの方法を指示されるはずだ。
次に転職先が決まっている場合。
転職先でも企業型確定拠出年金の利用ができる会社であれば、そちらへ移換することができる。
もし企業型確定拠出年金の利用ができない企業であれば、個人型の確定拠出年金へ資産を移すことになる。
退職時に受け取る・返却するべき書類
退職時には、いくつかの手続きが必要になることはご理解いただけただろうか。
最後に退職時に受け取る・返却するべき書類をご紹介しよう。
退職時に受け取るべき書類
まず、会社から受け取るべきものは、以下のようなものがある。
退職時に受け取るべき書類
- 雇用保険被保険者証
- 厚生年金基金加入者証
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 退職証明書
- 源泉徴収票(後日郵送される場合もあり)
これらの書類は、転職先が決まっていても、いなくても受け取る必要がある。
その後の手続きに必要な書類なので、もらい忘れに気をつけてほしい。
▼雇用保険被保険者証
転職先の企業に提出して手続きしてもらうことになるので、離職期間がある場合には紛失に注意しよう。
▼厚生年金基金加入者証
加入していたことの証明になるとともに、再度加入する際に必要になるので保管しておこう。
▼健康保険被保険者資格喪失証明書
窓口で手続きをする際に提出を求められるため、必ず取っておくこと。
離職期間がなく、すぐに次の会社に就職する場合には使わない。
▼退職証明書
離職期間があり、失業給付金を受け取りたいときに使う。
万が一なくしてしまった場合でも、前の職場に連絡すれば再発行することは可能。
▼源泉徴収票(後日郵送される場合もあり)
払いすぎた税金を確定申告で取り戻すときや、新しい職場での税金計算で使用する。
退職時に返却するべき書類
一方で、退職時に返却が必要なものもある。それは「健康保険証」だ。
退職後は健康保険証を使えなくなるため、最終出勤日に返却することを忘れずに。
まとめ
▼住民税の手続き
住民税の手続きポイント
- 退職後の住民税の支払い方法は3つ
(1)退職前の給与で残りを一括天引きする
(2)転職先で特別徴収してもらう
(3)普通徴収で納付する - 収入が変動しても、住民税の金額は変わらない
▼所得税の手続き
所得税の手続きポイント
- 所得税とは、給与にかかる税金のこと
- 収入がない期間は所得税を払う必要がないので、納付のための手続きは不要
▼健康保険の手続き
健康保険の手続きポイント
- 退職後の健康保険の支払い方は2種類
(1)退職する会社の健康保険を継続する(任意継続)
(2)住んでいる地域の運営する健康保険に新たに加入する - どちらにしても手続きが必要である
▼厚生年金の手続き
厚生年金の手続きポイント
- 厚生年金は会社員が加入できる年金のこと。会社員でない場合は加入することができない
- 転職先が決まっている場合には、年金手帳を見せることでそのまま移行できる
- 離職期間がある場合には「国民年金」に加入する必要がある
▼退職時に会社から受け取るべき書類
退職時に会社から受け取るべき書類
- 雇用保険被保険者証
- 厚生年金基金加入者証
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 退職証明書
- 源泉徴収票(後日郵送される場合もあり)
▼退職時に会社へ返却する必要があるもの
- 健康保険証
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