転職サイトの利用にあたって、気になる求人は隅々までチェックすることが転職成功には不可欠だ。
好条件ばかりに注目して、自身にとって不利な条件を見落とさないため、ということは言うまでもないだろう。
しかしそれでも、いざ転職してみたら思わぬ落とし穴にはまってしまった、という事例もある。
転職後の満足度に関する調査で、転職後に「不満」と感じた内容とその割合を見てみよう。
調査項目 | 満足ではない(%) | やや不満(%) | 不満(%) |
---|---|---|---|
仕事内容・職種 | 10.3 | 7.7 | 2.6 |
給与・賃金 | 27.9 | 18.0 | 10.0 |
労働時間・休日・休暇 | 21.1 | 15.7 | 5.4 |
通勤の便 | 13.1 | 10.4 | 2.6 |
福利厚生 | 12.6 | 9.1 | 3.5 |
※出典:厚生労働省「平成27年・雇用の構造に関する実態調査」より
調査項目の中から、いずれも求人情報で事前に確認することができる事柄を抜粋した。
にもかかわらず、肝心の「仕事内容や職種」でさえ5人に1人が少なからず不満を感じ、「給与や賃金」に関しては実に2人に1人が多少なりとも不満を抱いているのだ。
繰り返しになるが、求人の内容は隅々までよくチェックしなければならない。
それでもこれだけのギャップが生まれてしまう背景には「求人情報の嘘」が少なからず関係している。
そこで今回は、企業側で数多くの求人情報を作成してきた経験から、求人情報の嘘を見破る方法について紹介したい。
また、応募する側の嘘や少々「盛った」アピールについても解説する。
求人情報の嘘を見破り、好条件の企業を見出したら、ぜひ高い確率で採用に結びつけて、あなたの転職を成功へと導いて欲しい。
転職サイトの求人情報に出てくる嘘の可能性がある注視ワード
転職サイトの求人情報には嘘の可能性が高い要注意のワードがある。
企業にしてみれば数十万円という広告料(コスト)をかけているため、1人でも多くの応募者が欲しい。
さらに求人広告の4週間~8週間といった限られた期間で、より注目されるために嘘を含ませることがあるのだ。
嘘の種類は大きく分けて4つある。
- 実際より誇張している
- マイナス要素を言い回しでごまかす
- 特別な事例を通常のように記載する
- 都合の悪いことは載せない
こういった嘘には気付きにくいため、要注意と言えるだろう。
実際に見られる要注意ワード
実際の転職サイトに見られる求人情報の要注意ワードを見てみよう。
要注意ワード | 要注意の理由 |
---|---|
先輩たちについてOJTで~ | On the Job Trainingといえば聞こえはいいが、入社してすぐに現場を任される可能性アリ 人手不足が深刻で先輩社員が現場で教えるしかない、というケースも多い |
若手が活躍~ | 離職率が高く若手しか残っていない可能性がある 年配の社員が多く若手社員が欲しい場合の嘘でもある(女性が活躍、なども同様) 5年、10年と働ける環境ではないために常に若手が多いブラックの可能性もあり要注意 |
がんばり次第では~ 20代で年収1000万円も~ | 過去にそのような例があったかもしれないが通常ではない 入社時の給与が低い場合や、歩合給+低い基本給といった営業職などに多い嘘といえる |
和気あいあいとした~ アットホームな~ | 小規模オフィスや中小企業にありがちで評価制度やコンプライアンスが緩いことが多い また、一部の社員だけが仲が良く、かえって人間関係で悩むことにもなりかねない |
独立したい方を応援~ 夢を応援します! | ベンチャー企業に多く、きちんと支援制度が明記されていない場合は特に注意 意識高い系の経営者が精神論に偏っていることがよくある 社員をじっくり育てるような社風ではなく極端な成果主義の場合もある |
これらはいずれも、あなたが今の職場を辞めようしている理由の逆を狙う場合が多く、魅力的に見えてしまうことがある。
例えば、ベテラン社員や上司との折り合いが悪く、チャンスもなかなか与えられずに転職を決めたとする。
そのような時に「若手が活躍」「アットホームな社風」と目につけばつい、応募したくなるのも頷けるだろう。
ワード以外にも注意したい、ブラック企業の可能性がある求人広告
求人広告に出てくるワード以外にも、ブラック企業の可能性があるため注意して欲しい求人広告がある。
- 常に求人広告を出している
- どの転職サイトでも同じ求人を見かける
- 「月給22万円~60万円」など給与の幅が極端に広い
- 「急募」や「大量採用」を常にしている
このような求人広告には注意が必要だ。
こういった場合は、社員の定着率が低く、企業側から見てとにかく応募者の人数だけを重視している可能性が高いからだ。
実際の例では、大量採用でそのほとんどが契約社員採用だった、というケースがあった。
もちろん記載されている給与は一番低い金額でのスタートだ。
それでも真面目な応募者ほど、がんばれば正社員登用もアリ、といった甘い言葉に乗せられてしまいやすい。
正社員の求人に応募したのに契約社員採用と言われた時点で「いつかきっと」の約束は信用できないと考えるべきだろう。
嘘の求人情報を見極める方法
要注意のワードやブラック企業にありがちな求人を見かけても、あなたはまだ、半信半疑といったところだろう。
第一、全てを疑っていては本当に好条件での転職のチャンスも逃してしまいかねない。
そこでさらに嘘の求人情報を見極める方法をいくつか挙げておく。
さらに詳しく解説するので求人票のチェックと併せてぜひ実践してみて欲しい。
働いている人に直接聞く方法は最も信頼度が高い
その会社で働いている知人や友人に聞いてみるのが最も信頼度が高い方法だ。
また、その会社に知人や友人がいないという場合はFacebookなどのSNSを活用しよう。
注意点やコツとしては、
- 転職を考えていることは言わない方が好ましい
- 職場や給料の悩み相談といった話題の入り方が良い
- 欠点や悪い面ばかりを聞こうとしない
- 職場内や人事に話がモレ伝わってしまうリスクがある
などがある。
例えば「今、この職種で給料がこの程度なんだけど」といった具合に相談を持ちかける。
その上で「あなたの会社はどう?」といった話の入り方なら自然と気になる点を聞き出すことができて、情報収集していることが相手の職場内に知れてしまうリスクも低くできるだろう。
応募しようと考えている会社で働いている人に直接話を聞ける状況があるならぜひ利用すべきだ。
第三者の評価を参考にしたいならメディアを利用する方法を使う
就職四季報などの書籍や転職口コミサイトを使うことで客観的にその会社を知ることができる。
就職四季報と転職口コミサイトを比較して紹介するので参考にしてみて欲しい。
項目 | 就職四季報 | 転職口コミサイト |
---|---|---|
媒体・提供元など | 東京経済新報社が出版している書籍 総合版、女子版、優良・中堅企業版などがある | 転職会議、Volkers、カイシャの評判、キャリコネなどのWebサイト |
特長 | 取材による第三者目線での情報 かなり客観的に見ることができる | その会社で働いていたことのある人が 評価する口コミ投稿や評価 |
料金など | 2,000円前後 | 無料会員になって口コミを投稿するか 1,000円程度の月額料を支払う |
メリット | 良いことも悪いことも主観が入らない 給与水準から有給消化率、離職率など会社を横並びにした比較がしやすい | 企業の大小に関係なく投稿されている 実際に働いていた人の生の声に限りなく近い |
デメリット | 数字やデータなど、その水準が良いか悪いか判断する力は必要 | 本人バレを気にして投稿するケースや悪意のある投稿も中にはある |
メディアを利用する方法は、いくつかの候補企業を見比べるのに向いているだろう。
また、2chなどの匿名掲示板で質問する方法もある。
この方法は望む答えが得られない場合、事実と異なる情報も少なからず含まれる場合があることに注意して使うのが良いだろう。
メディア利用で気をつけて欲しいのはいずれも客観的な情報でしかなく、データや口コミから自ら判断する力は必要だということだ。
書いてあることについて、良いか悪いかを決めるのは自分自身だということは肝に銘じて欲しい。
転職面接で間接的に聞く方法は誰にでもできる方法
ここまでの方法で思うような情報が得られなかったとしても、必ず実践して欲しい確認方法がある。
転職面接の場で間接的に気になる部分を聞いてみる、というのは誰にでもできる方法だ。
強いて言えば「嘘の求人情報かも」と思う会社でも、とりあえず応募する必要がある点がリスクと言えるだろう。
聞き方は大きく分けて2つ。
- クローズド・クエスチョンで真偽を確かめる
- オープン・クエスチョンで情報収集する
クローズド・クエスチョンとは、YESかNOで答えることができるような質問だ。
例えば「有給休暇は取りやすいですか」といった質問の仕方だ。
一方、オープン・クエスチョンはその質問に対して説明を求めるような質問のことを言う。
例えば「御社で有給休暇を取る時の方法を教えてください」という感じになる。
あまり直接的に聞かない方が良さそうなことは、オープン・クエスチョンを使うことで判断材料を得るようにするのが良い。
ただしここでも最終的には自分自身で良し悪しを判断し、自分自身で決断を下すことには変わりがない。
転職成功のためにも、情報をしっかり収集して、後悔のない判断をして欲しい。
最新情報!職業安定法改正は転職者の味方
2017年3月に改正され、2018年1月で実施となった「職業安定法の改正」は転職者にとって嬉しいニュースなので紹介しておきたい。
要約すると「求人情報に嘘があったことが分かった場合、企業に対して行政指導や罰が与えられる」というものだ。
特に法律で指導されているのは以下のような点だ。
- 必ず具体的にしなければならない求人広告の内容がある(「言わない嘘」を認めない)
- 賃金(採用時に支払われる最低賃金)
- 試用期間と本採用後の労働条件の違い
- 裁量労働制やみなし労働時間についてなど
- 当初の求人広告を求人が終わる(採用する)まで保存
- 応募時点と採用時点で労働条件が変わる時は応募者に書面で提示
このように、都合の悪いことを隠した求人広告や、求人広告と違う労働条件で採用したりすることに対して、法律で取り締まることが罰則付きで具体的に強化されたのだ。
今後、本当に悪質なものにはきちんと罰則を適用してもらって、この法改正が転職者にとって心強い味方になってくれることを期待したい。
しかし一方で、こういった場合の行政の対応は、遅い、抜けがあるなど、今までの経験から見て必ずしも完璧でないことが少なくない。
また、ブラック企業からはより巧妙な嘘が出てくる可能性もある。
法律が味方になってくれることはありがたいが、ここまでに紹介したように自分自身で確認するというプロセスが大切であることに変わりはないのだ。
応募のプロフィールはどこまで嘘はOKなのか
一方で応募者がプロフィールを「盛る」こと、言ってみれば応募の嘘はどこまでが許されるラインかを解説していこう。
どこまでがOKかを知って、好条件の転職先への採用をより確実なものにして欲しい。
バレないことが大前提!バレない誇張のレベル一覧
どんな誇張や嘘でも、バレた時にはあなたの評価や信用は地に落ちる可能性が高い。
バレないこと、バレても気にならない程度が前提だ。
しかし一方でスキルや経験はむしろ少し大きく出ておいて、採用されたら速やかにそのレベルに追いつくことが出来れば、あなた自身のスキルアップにもなるはずだ。
嘘バレのレベルを一覧にするので参考にして欲しい。
事柄 | バレないレベル |
---|---|
年収 | 10万円~20万円程度。 年5000円~10000円は一般的な定期昇給の幅なので直近の見込み金額としては通用する。 |
スキル | 「少ししたことがある」や「一般的なノウハウ本でカバーできる程度」のこと。 採用から3か月もすれば実践や勉強で追いつける程度なら「できます」でも良いだろう。 |
経験 | 経験のある業務に付随する業務や、それを知識として知っている場合 したことがないだけで分かっているのであれば「経験あり」としておいてもバレない |
役職や役割 | 前職や現職の会社だけで通用する役職または係長以下の役職。 役職の経験が問われるのはまず課長以上の管理職だと思って良い。 |
転職や退職の理由 | 原則として都合の悪い内容であれば言わなくても良い。 採用する会社が前の職場に確認する、ということはほぼない。 よほど重要なことでなければ個人情報なので前の職場も教えない場合がほとんど。 |
年収を除いてはそのほとんどが自己申告でしか分からないことだ。
しかも最近では個人情報保護の考えが一般的なので、確認しきれないこともある。
逆に言えば、採用する会社が書面などで確認できる事柄は嘘を言ってもバレる、と思っておいた方が良いだろう。
バレる可能性があるのは入社書類や提出書類から
誇張や嘘がバレるのは、採用企業が書面で確認することができる場合だ。
会社ごとに多少の差はあるが、採用時には必ず提出する書類があり、会社側も当然注意して確認しているからだ。
実際に嘘がバレたケースでは次のようなものがある。
- 源泉徴収票、社会保険や年金の手続き・・・以前の報酬額(給与)が分かる
- 住民票記載事項証明書・・・年齢や住民票上の住所が分かる
- 免許証や資格者証・・・業務に関するものや資格手当の手続きで有無などが分かる
- 行政からの連絡や指摘・・・収入がある家族が扶養に入っている、前職と転職先の両方に就業していた期間がある
- 通勤経路の届出・・・定期代より実際は安い経路を使っていて電車の遅延や他の社員が見かけた、など
少しお得になればと狙った金銭関係の嘘はまずバレると思っていい。
一方でスキルや経験に対する嘘は、あなたがその専門用語も分からず全くのお手上げ状態でなければ、おおむねバレにくいと言えるだろう。
まとめ
ここまで転職サイトの嘘と対応策、応募者が使ってもいい嘘の程度などを紹介してきた。
実際にどちらも上手に使うことが出来るように、もう一度おさらいしておこう。
転職サイトの嘘のタイプと要注意ワード
転職サイトの嘘で気付きにくい嘘の種類は大きく分けて4つの傾向がある。
- 実際より誇張している
- マイナス要素を言い回しでごまかす
- 特別な事例を通常のように記載する
- 都合の悪いことは載せない
また具体的に、次のような要注意ワードは疑ってみた方がいいだろう。
- 先輩たちについてOJTで~
- 若手が活躍~
- がんばり次第では~
- 20代で年収1000万円も~
- 和気あいあいとした~
- アットホームな~
- 独立したい方を応援~
- 夢を応援します!
ブラック企業にありがちな求人広告の傾向
その内容だけでなく、ブラック企業の可能性がある求人広告の傾向を挙げておく。
- 常に求人広告を出している
- どの転職サイトでも同じ求人を見かける
- 「月給22万円~60万円」など給与の幅が極端に広い
- 「急募」や「大量採用」を常にしている
本当に業績が良く増員募集をかけている会社もあるが、社員の定着率が低く、常に補充求人を出している場合がある。
広告の内容と併せてチェックが必要だろう。
嘘の求人広告を見破る確認方法
嘘の求人広告を見破るための確認は、
- 働いている人の意見
- 第三者の評価
- 面接の場で自分で確認
この3つを収集することがポイントで、具体的に挙げると次のような方法がある。
- 働いている知人や友人に聞く(実践は難しいが信頼度は最も高い)
- SNSをうまく活用する(mixiやFacebookで実際に勤務している人に直メッセ)
- 2chで企業の板を見る・さりげなく質問する(望む回答が得られる可能性は低い)
- 転職クチコミサイトを見る(転職会議、Volker、カイシャの評判、キャリコネなど)
- 就職四季報などの本で調べる(有料だが第三者目線で信頼度は高い)
- 転職面接で間接的に聞く(工夫は必要だが実践しやすい)
それぞれ難易度や効果は異なるが、出来ることはやる、という行動力が転職成功への近道だ。
また、最終判断はあくまで自分で、という鉄則を忘れないようにしよう。
自分のプロフィールでバレやすい嘘、バレにくい嘘
自分自身が応募から採用までの間でアピールして良い嘘とそうでない嘘がある。
- 給与など、もらえる金銭に関する嘘はバレやすい
- 能力や経験などは原則自己申告なのでバレにくい
大きく分けるとこの2つだ。
実際に確認が取れてウソがばれてしまうようなケースは次のようなものがある。
- 源泉徴収票、社会保険や年金の手続き・・・以前の報酬額(給与)が分かる
- 住民票記載事項証明書・・・年齢や住民票上の住所が分かる
- 免許証や資格者証・・・業務に関するものや資格手当の手続きで有無などが分かる
- 行政からの連絡や指摘・・・収入がある家族が扶養に入っている、前職と転職先の両方に就業していた期間がある
- 通勤経路の届出・・・定期代より実際は安い経路を使っていて電車の遅延や他の社員が見かけた、など
スキルや経験は、
- 3か月程度で追いつけるものであれば多少誇張しても大丈夫
- 役職は世間一般の係長以下であればあまり問われない
- 退職理由は都合の悪いことを言わない、という回避方法がある
まずは転職サイトで求人広告の嘘を見破り、リスクを回避して欲しい。
その上で優良企業を見つけたならプロフィールのちょっとした嘘で台無しにすることのないよう、内定を確実なものにして、転職成功を勝ち取ろう。
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