結婚について真剣に考えはじめたなら、パートナーと自分が望む生活スタイルを踏まえたうえで、双方が気持ちよく暮らしていける働き方を考えておくことがオススメだ。
独身のうちは実家暮らし・一人暮らしで、比較的自分の時間が持てるからこそ現在の仕事が続けられている人も少なくない。
- 結婚したら今と同じように仕事を続けていけるのか
- 結婚後に想定される妊娠・出産・育児を仕事と両立していけるのか
上記のような悩みから、転職を検討している人もいるだろう。
今回は、結婚する時に女性が悩みがちな転職・働き方のベストなタイミングを解説していこう。
それぞれの状況に合ったベストなタイミングで転職にトライすることで、結婚生活をより良くスタートさせられるはずだ。
目次
2分で完了!結婚する時の働き方診断シート
とはいっても、結婚を機に転職するべきかどうでないかは、絶対にこうだという答えはない。
今のままの働き方が難しい場合、転職する方が夫婦生活にとってベストかもしれないが、その逆もありうる。
そこで現在の勤務状況や結婚の事情によって「あなたが転職すべきかどうか」の目安が簡単に分かるチェックシートを作成してみた。。
チェック項目 | チェック | グループ |
---|---|---|
引越しの予定はある | A | |
夫と自宅が離れている | A | |
近い将来に出産する予定が決まっている | A | |
残業時間が月に40時間近くあるなど時間外就労は多い | A | |
長時間働くことを「よし」とする職場環境である | A | |
ワーキングマザーでも役職者など活躍できている人はいる | B | |
育休後の復帰時にフレックス勤務が可能である | B | |
部署異動の申請を出せる状況である | B | |
会社にリモートワークの制度がある | B | |
職場で出産・育児休暇を取得している人がいる | B |
グループAのチェックが多かった場合、転職を視野に入れた方が結婚後もスムーズに働ける可能性がある。
一方グループBのチェックが多かった場合、現状維持で仕事を続けていく方が得策だ。
転職については、結婚前なのか後なのかで状況や選び方も大きく異なる。
つまり、結婚後の自分にとってベストな働き方をしたいなら、以下の3つのパターンが想定される。
- 結婚前に転職する
- 結婚後に転職する
- 転職せずに、今の職場で働き方を変える
次章でそれぞれのパターンの具体的なメリット・デメリット・向いているタイプについて解説していくので「自分はどれかな?」と思いつつ読んでほしい。
(1)結婚前に転職するメリット・デメリット
転職サイト「マイナビ転職」が転職意向のある20~34歳の女性会社員を対象に調査したアンケート結果では、理想の転職先の条件としてポイントが高かったのは以下の順番だ。
1.自分が興味のあること、やりたいことができる(55.6%)
2.妊娠・出産・育児のための制度が整っている(52.8%)
3.残業が少ない(51.7%)
4.成果が給与に反映される(36.7%)
5.転居を伴う転勤がない(34.1%)
6.待遇(配置や昇進など)に男女差がない(32.3%)
上記を見るに、やりたいことができるというポイントは大事であるものの、その他のほとんどの項目では「結婚後も働きやすい環境」を望む女性がほとんどだという状況が伺える。
結婚前に転職しておくならば、すでに結婚後の生活拠点(実際に居住する住まいなど)がある程度分かっていることが理想的だ。
結婚してからは、今まで自分のためだけに使っていた時間を、家族のために費やす状況も増えてくる。
できるだけ勤務場所と居住地域が離れない方が、生活の負担が増大するリスクを下げるはずだ。
ここで、結婚前に転職する場合のメリット・デメリット、向いているタイプについて解説していこう。
結婚前に転職するメリット
結婚前に転職する場合、主に以下の3つがメリットとして考えられる。
結婚前に転職するメリット
- 結婚前は比較的柔軟に時間が取れるため、しっかりリサーチしてより良い転職先を探すことができる
- 結婚前に仕事に慣れておくことで、結婚後の急激な生活の変化に対応できやすい
- 結婚後に妊娠・出産をしても継続して働きやすい職場に転職しておけば、将来的に安心
結婚後には、出産という人生の大きな転換期を迎える可能性がある。
実際に出産した場合、出産の前後はどうしても今のように仕事をし続けることは不可能だ。
出産することでパートナーをはじめ、両親にも多くの助けを得ることになるだろう。
また、産休・育休を取得すればそれだけ職場の上司や同僚にも仕事面で助けてもらう必要が出てくる。
できるだけ早めに転職をしておくことで、将来的に想定される出産時における周りへの負荷を軽減させることが可能だ。
結婚前に転職するデメリット
その一方、結婚前に転職することでデメリットが生じる場合もある。
主に以下の3つがあげられる。
結婚前に転職するデメリット
- これまでアップさせてきたキャリアをダウンさせる転職となる可能性がある
- 転職先の面談時に「結婚や出産の予定」を聞かれ、時には不採用となる可能性もある
- 結婚前に想定していた生活パターンが変わった場合、再度転職するにはリスクが高い
今の職場で培ってきた実績は、転職すればいちから積み重ねていく必要がある。
スキルや能力は活かすことができても、社内で勝ち得たポジションは手放さなければいけない。
また女性の転職では、面談時に深く掘り下げた質問をしてくる企業もある。優秀な人材を採用するために多大な経費をかけてきたからこそ、一度入社したら長く続けてほしいというのが企業側の切実な思いだ。
20代後半~30代などであれば「結婚・出産」についての質問も覚悟しておく必要がある。
なかには結婚を予定していることで採用に躊躇してしまう企業もあるのも事実だ。
ここではしっかりと、「出産についてはまだ先の予定で数年は仕事に邁進したい」など、しばらくは仕事に力を注ぐという意思を伝えておくことだ。
結婚前のいつ頃転職するかにもよるが、あまりに早いタイミングで転職してしまうと、想定していた生活パターンができなくなる可能性もある。
キャリアアップなどの理由もなく職を転々としてしまえば、職歴だけが増えてしまうことになる。結婚前の方が転職しやすいからと焦ってしまうと、思わぬ苦労が待っているかもしれないので要注意だ。
この時期に転職した方が良い人のタイプ・シチュエーション
求人・転職サイト「とらばーゆ」が30代の働く既婚女性を対象に調査したアンケートでは、仕事と家事を両立できる職場に転職するなら結婚前に転職する方がいいと回答した女性が30%にのぼった。
これは結婚後に転職する方がいいと回答した女性(19.0%)よりも多い。
既婚女性から見た場合結婚前の転職はおすすめなのだ。
ただし、パートナーや周りの環境などそれぞれに応じてベストなタイミングは異なる。
結婚前に転職しておくといいパターンには、以下のようなものがあげられる。
結婚前に転職しておくといいパターン
- 結婚前からある程度結婚後の生活パターンが把握できている
- パートナーの職場環境では転勤する可能性がない
- まだまだ出産は考えておらず、当面は共働きでキャリアアップを目指したい
結婚前の方がさまざまな面で動きやすい時間もあり、生活パターンに余裕もあるのは事実だ。
上記のようなパターンに当てはまる場合、結婚前に転職しておいた方が結婚後の生活・仕事に慣れやすい。
(2)結婚後に転職するメリット・デメリット
先述で参考にしたアンケート結果によれば、アンケートに回答した30代既婚女性が、実際に転職をしたタイミングとして最も多かったのが結婚後(妊娠・出産前)で37%にものぼった。
結婚前後の慌ただしさが落ち着いてからの方が、実際の生活パターンもつかめるため、転職しやすいというのが現実だ。
ここで、結婚後の転職についてメリット・デメリットについて解説していこう。
結婚後に転職するメリット
結婚後に転職するメリットは主に以下の3つだ。
結婚後に転職するメリット
- 結婚後、ある程度落ち着いてから仕事をはじめられる
- これからの結婚生活に適した転職先を探し、選ぶことができる
- このタイミングで採用してくれる企業は、妊娠・出産しても長く働きやすい環境が整っている場合が多い
結婚後に転職する場合、前職の離職後から少し間をおいて転職するパターンも見受けられる。
ある程度生活に慣れてからの方が心に余裕もできるため、スムーズに仕事に取り掛かりやすい。
また、新たにスタートした結婚生活や将来の仕事に対する希望を叶えられるような条件で転職先を探すことができるのもメリットだ。
結婚していることを理解したうえで採用してくれる企業は、既婚女性が働きやすいと想定される。ずっと長く働きたい場合はこうした企業と縁がつながるチャンスになる。
結婚後に転職するデメリット
結婚後に転職した場合、その後に想定される出産のタイミングをどう考えているかが大きく影響する。デメリットとしては主に以下の3つだ。
結婚後に転職するデメリット
- 転職後すぐに産休・育休は取りにくいため、出産はしばらく考えられない
- 結婚後に転職しすぐに妊娠した場合、職場の上司や同僚に多大な迷惑をかけてしまう
- 結婚前に比べると、結婚後の方がよりキャリア志向の転職が難しくなる
すぐに出産を考えているならば、結婚後に転職するのは大きなリスクがあるためおすすめしない。
早期に妊娠することで、自分だけではなく周りにも多大な迷惑をかけることになるからだ。
また結婚後に転職するとなると、どうしても転職入社後から出産までの期間が短いことが想定される。
転職先企業に対する貢献度も少ないまま妊娠・出産となるのも覚悟しておこう。
結婚後だとキャリア向けの求人にチャレンジできないわけではないが、可能性が低くなることも想定しておくべきだ。
この時期に転職した方が良い人のタイプ・シチュエーション
結婚後でも仕事を続けていきたいと考えているならば、育休の取得は必須である。
育休は育児・介護休業法に基づいて制度化されているが、そもそも育休の対象となる労働者の条件として、次の3つがある。
- 原則、1歳に満たない子を養育する男女労働者
- 同一の事業主に1年以上継続して雇用されていること
- 子が1歳6カ月になる日までに労働契約期間の満了が明らかではないこと(労使協定で別途定められた労働者は育児休業対象外とする)
参考:http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_06.pdf
結婚後のライフプランに子どもを持つことを考えているならば、育休のことを踏まえたうえで転職すべきだ。
結婚後に転職する方がいい場合、以下のタイプ・シチュエーションが考えられる。
結婚後に転職する方がいいケース
- 結婚を機に居住地域が変わる(パートナーの転勤が関連する結婚など)
- 仕事よりも、家庭にやや比重を置いて働く予定である
- 転職後、1年以上は出産予定をしていない
転職応募の面談時には、しばらくは仕事にも力を注ぐ予定であることを必ずアピールし、実際にも出産は当面しない心づもりをしたうえで転職する覚悟をしておこう。
仕事よりも家庭重視に考えてはいるものの、責任持って仕事をこなすことで社内での評価も高まるはずだ。
(3)転職せずに働き方を変えることのメリット・デメリット
結婚したとしても、現在の職場が結婚後に望むべき将来像にマッチしている、もしくはマッチする可能性があるのならば、必ず転職すべき必要はない。
結婚前にあらかじめ上司へ相談するなどし、今の職場で働き方を変えていくこともできるはずだ。
以下で、結婚しても転職を選ばないことのメリット・デメリットについて具体的に解説していく。
転職しない選択のメリット
これまで頑張ってきた職場を捨てるのは実に悲しい。できれば続けたいと思うのが本音ではないだろうか?
結婚後はこれまでの働き方を変える、つまり「転職をしない」メリットは主に以下の3つだ。
転職しない選択のメリット
- これまで社内で積み上げてきた実績・ポジションを捨てる必要がない
- 転職による新たな仕事の習得・職場環境や人間関係などの問題がない
- 転職活動に費やす労力・資金が必要ない
新たに仕事をスタートさせるには、自分に適した転職先を選ぶ・転職活動をする・転職後に仕事を覚える・新たに人間関係を築くなどさまざまなことが待ち受けている。
また結婚では、結婚式(しない場合もあるが)・引っ越し・引っ越しにまつわる各種手続き・親族や友人などの人付き合いなど数カ月~1年弱のうちにやるべきことが盛りだくさんだ。
結婚と転職のタイミングが近いほど、やるべきことが集中して大きな負担を抱えることになる。
転職しないメリットはキャリアの維持だけでなく、ただでさえ煩雑な結婚前後の時期を極力スムーズに済ませることができるのだ。
転職しない選択のデメリット
これまで知っている間柄だからこそ、大切にしたいのが職場の人間関係である。仕事についてもこれまで通りの担当で続けていきたいはずだ。
ただし、転職せずに働き方を変えることで、上記の項目にデメリットが生じる場合もある。主に以下の3つだ。
転職しない決断によるデメリット
- 出産後に復帰した事例がない場合、新規開拓者としての悩みやトラブルも想定される
- うまくいっていた社内の人間関係にすき間風が吹く場合もある
- 配置転換などで希望とは異なる仕事を任されることもある
入社した時には妊娠・出産を想定して企業を選んだわけではない人も多く、出産後も働いている女性がいない、少ないといった場合もある。
現在では働き方改革の推進により、企業側も出産後の女性社員が働ける環境づくりに積極的だ。
しかし産休・育休取得事例が少ない、もしくは社内初であれば、開拓していく労力も必要になる。それに伴い、円滑だった人間関係にも亀裂が入る可能性もある。
また比較的残業の多い部署だった場合、配置転換も考えられる。致し方ないとはいえ、自分の望むような仕事内容に就けない可能性もあると覚悟しておきたい。
女性が結婚を機に働き方を変えたモデルケース
現在では、育児をしながら仕事をしていけるような職場環境を整える企業が増えている。
深刻な人材不足もあり、優秀な人材に長く働いてほしいという企業側の意図もあろう。
ここで、女性が結婚の時期にどんな風に働き方を変えているのか、3つのモデルケースをご紹介していく。
現在働いている企業にもよるが、制度化されている育児支援があればぜひ活用することをおすすめする。
一時的にパートなど雇用形態を変更し、後に正社員へ復帰
もともと正社員として勤務していたAさん。妊娠したものの出産後も同じように正社員で勤務できるか不安だった。
企業との相談のうえ、一時的に雇用形態を変更し、パートとして数年間勤務することにした。
子どもが3歳になるのを機に正社員へ復帰、キャリアのダウンを最小限に抑え、妊娠前に在籍した部署で引き続き勤務している。
リモートワークの活用
Bさんは出産後、子どもが生後6か月の際に職場復帰した。
まだまだ子どもが小さいため、リモートワーク制度を活用して在宅で仕事を行っている。
職場とのやり取りは主に電話とメール、チャットやスカイプだ。仕事内容は主に経理事務であり、仕訳作業が主体である。
月1回の定期会議には出席しているが、仕事は妊娠前と同じであり、体力的・精神的にも継続しやすい環境である。
フレックス制度・時短勤務制度の活用
同じ職場でよく似た時期に妊娠・出産をしたCさんとDさん。それぞれ子どもが1歳になるのを機に職場復帰を果たした。
Cさんはフレックス制度を活用して仕事をしている。
フレックス制度では、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と選択できる労働時間帯(フレキシブルタイム)に分かれている。
Cさんの企業では10時から15時がコアタイムなので、子どもが保育園に登園・降園する時間に合わせ、基本的に8時から17時の勤務時間帯にしている。
実際の労働時間は妊娠前と変わらないため、同レベルの収入が得られている。
一方でDさんは時短勤務制度を利用している。
時短勤務制度は育児・介護休業法に基づいた制度で、3歳に満たない子を養育している労働者に対し、1日の所定労働時間を原則6時間とするものである。
Dさんは復帰後、9時から16時という時短で勤務しており、家事や育児の負担を軽減するのに役立っている。
まとめ
結婚する時の働き方チェックシートを再度載せておこう。
チェック項目 | チェック | グループ |
---|---|---|
引越しの予定はある | A | |
夫と自宅が離れている | A | |
近い将来に出産する予定が決まっている | A | |
残業時間が月に40時間近くあるなど時間外就労は多い | A | |
長時間働くことを「よし」とする職場環境である | A | |
ワーキングマザーでも役職者など活躍できている人はいる | B | |
育休後の復帰時にフレックス勤務が可能である | B | |
部署異動の申請を出せる状況である | B | |
会社にリモートワークの制度がある | B | |
職場で出産・育児休暇を取得している人がいる | B |
診断結果の見方も改めて載せておこう。
診断シートの使い方
- グループAのチェックが多かった場合:転職を視野に入れた方が結婚後もスムーズに働ける可能性がある
- グループBのチェックが多かった場合:現状維持で仕事を続けていく方が得策
あなたの「結婚と転職、どうする?」という悩みの解決につながれば幸いに思う。
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